運命(?)の出会いとブランドの誕生

運命(?)の出会いとブランドの誕生

近鉄四日市駅から歩くこと約5分。立派なアーケードが続く商店街の一角に、リアルな動物モチーフのアクセサリーでファンが多い「デコヴィーニャ」のアトリエ&ショップがあります。ブランドデザイナーの坂井さんとブランドマネージャーの郡さんを訪ねました。


SOUQ
1階の[COCCODECO]はステキなショップですね。ここでは、デコヴィーニャの全アイテムを見ることができるんですか?



全部置きたいんですけど、置けてないかなあ。


坂井
納品が間に合わないと、ここの商品を送ったりもしますので(笑)。



でもほぼそろっています。開いているのは金土日だけですけど。



SOUQ
最近、このようなアトリエショップは増えてるんですかね?


アクセサリーだとそんなに場所も取らないし、アトリエを構えるときにお店もできるような場所を探している作家さんは多いんじゃないでしょうか。うちは、元々店からスタートしているので、ちょっと性格が違うかもしれません。商店街にあるお店が、週末だけ開いてるという感じですかね。

坂井
そうやね。東京でうちのアクセを見てくれてた人が、たまたま来てくれて、「これ東京で売ってたけど、ここでも売ってるんですね」と言うので、ここでつくってるんですよと言うとビックリされますね。



SOUQ
「デコヴィーニャ」は、ユニットして活動してますが、お二人の役割というのは?

坂井
ボクは、デザインをして実際にアクセサリーをつくっています。


私はデザインのディレクションとマネージャー的な役割ですね。

坂井
今までは、あまりボクが表に出ることはなかったですね。基本出たがりじゃないんで。


じゃあ、私が出たがりみたいじゃないですか!



SOUQ
なんか夫婦漫才のような絶妙な掛け合いですね。坂井さんがアクセサリーづくりを始められて何年ぐらいですか?

坂井
13年ですね。

SOUQ
その時はお一人で始められたんですか?

坂井
はい、そうです。この商店街の並びで、今のショップの3分の2ぐらいのスペースで、1年ぐらいやってました。最初はブライダルのオーダージュエリーの店だったんですよ。


さっきも言ったように、アクセサリー・ブランドを始められる方って、まずブランドをつくって、それからアンテナショップなりアトリエショップを始めると思うんですけど、うちは逆。まずショップありきで。そこのオリジナルアクセサリーとして「デコヴィーニャ」が生まれたんですよ。



SOUQ
それって珍しいケースなんですか?

坂井
最初は、それが珍しいかどうかもわからなくてやってました。もちろん商品を売りたくはあったんですけど。どうしていいのかわからず、いろんな人に聞きました。ああ展示会に出せばいいのかとか。


雑誌に載るにはどうしたらいい? ってやっとったよね。私、東京の大手出版社とかに電話しましたもん。編集部全部に片っ端から。でもガッチャガッチャ切られました。

坂井
飛び込み営業にも行ってたなあ。当然玉砕しましたけど。


今だと心が折れてると思いますけど。当時は怖いもの知らずでした。



SOUQ
坂井さんは、お店を始める前もずっとジュエリーの世界にいらっしゃったんですか?

坂井
そうです。ブライダルのオーダージュエリーでは最大手の、名古屋の会社に勤めていました。自分でいうのもなんですが、意外に出世しまして。でも性格的にそんな長く続かないタイプで、数年で会社とケンカしたりして。気が強いのか、融通が利かないのか…。


両方だって。
坂井
四日市にオーダージュエリーの店がなかったので、独立すればやっていけるんじゃないかと思って、会社を辞めてショップをオープンしました。この商店街を見にきたら、すごく安い家賃で借りられることがわかって。


行き当たりばったりやね。



SOUQ
郡さんは四日市出身ですか?


そうです。このへんが小学校校区というぐらいの地元です。その頃、私は大きい会社で普通に働いていたんですけどね。

SOUQ
それが、どうして坂井さんの店へ?

坂井
店を始めてすぐ、一瞬ジュエリー教室をやってたんですよ。そのとき、生徒さんとして来てくれて。


勤めていた店舗がなくなることになり、いきなり転職をしなければならなくなったんですよ。なんとなく転職をするならジュエリー業界がいいなと思ってた。そんなとき店の前を通りがかって、ジュエリー教室やってるな。向き不向きだけでも確かめてみようかなとなりまして。

SOUQ
確かめてみたら、向いてたんですね?


それは今となってはどうかわからないですけど(笑)。坂井は、事務的なことがあまりわかってなくて。納品書とか値札とか結構いいかげんで。えっそんなんでいいの? 仕事終わったら手伝いに来ましょうか?ってなりまして。手伝い始めたら、ラクって思ってもらえたみたいで。「転職するんやんね。よかったらウチ来ない?」って言ってもらったんですよ。でも、四日市かあ…。私、大きい会社が好きだったので(笑)、東京に行くか神戸に行くかと思っていて。四日市かあ…って。



坂井
そんな感じだったよね。


でも、ここならなんでもやれそうな気がしたんですよね。営業をやったこともなかったのに「たぶんできます!」、加工もやったことなかったけど、「たぶんできます!」って。

坂井
加工はあんまりできんかったな。

かなり無茶な感じで、やってたような気がします。

坂井
当時は、僕ともう1人ぐらいの少人数でやっていたので、急に出荷がたてこんできたときも全然間に合わなくて。値札も全部手書きでやってたしね。やり方が全然わからなかったんですよね。


坂井は、モノを売る経験もなかったので、卸先の気持ちがわからなかったんでしょうね。そこは、私が会社時代、そういう場にリアルにいたので役に立ちましたね。

坂井
それはありがたかったです。


それから、ずっといっしょにおるよね。もう12年ぐらいかあ。

SOUQ
「デコヴィーニャ」といえば、ウサギやリス、モモンガなど動物モチーフのアクセサリーですよね。このようなアイテムをつくり始めたきっかけや思いをお教えください。

坂井
店は、オーダージュエリーから始めたんですけど、面白くないんですよね。お客さんの話を聞いて、言われた通りに形にする。だから自分のデザインという気がしない。下手するとミッキーマウスのリングをつくってくれって言われますから。


「カルティエ」のリングを持ってきて、「これと同じものをつくってくれ」とかね。

坂井
もちろん、さすがにそういうことはしないんですけど、似たものはつくらないといけない。せっかく独立したのに、どこかモヤモヤしてまして。そのとき、オリジナルのアクセサリーをつくろうと思ったんですよ。元々はクワガタとか蝶の昆虫のアクセをつくりたかった。周りは反対してたんですけど、絶対つくろうと思っていて。ところが、「トルクアータ」というブランドが半年違いぐらいで先に始めて。雑誌にも載り始めていたんですよ。



SOUQ
一足先にいかれてしまってた。

坂井
これはやられたなと。じゃあ、昆虫よりはもうちょっとみんなに好かれて、かっこいいというよりかわいいものは何かなと考えて。ウサギのアクセサリーはほかにないなって、思いついたんですよ。

SOUQ
では、最初はウサギモチーフをたくさんつくっていた?

坂井
そうですね。ほとんどがウサギでした。


最初は、なかなか名前も覚えてもらえなかったので、「ウサギ・アクセサリーのデコです」なんて名乗ってたぐらい。

SOUQ
当初は、ブランド名は「デコヴィーニャ」ではなく「デコ」だったんですね。


そうです。法人化したときに、「デコヴィーニャ」と命名しました。

坂井
「デコ」だと、グーグルで検索しても、なかなか最初に出てこないんですよね。ほかにもいろんなデコがあるので。ケータイのデコレーションだったり、サッカーのデコ選手だったり。




それで「デコ」に何かをつけようということになって。ポルトガル語でえくぼのことをコビーニャというんですよ。で、みんなが笑顔になれますようにという願いを込めて、「デコヴィーニャ」にしました。

SOUQ
素敵な名前ですね。そして“ウサギアクセサリーのデコ”は、そこからバリエーションが増えていったのですか?


始めた当初は、坂井のこだわりも強くて、つくる動物の条件をすごく厳しくしてたんですよ。ヨーロッパに生息していて、野生で、大きさも家畜ぐらいまでで、というふうに。だから、ネコは家にいるイメージがあるからナシ、クマも大きすぎるからないよねとか。そうすると対照がかなり限られてきちゃって。

坂井
当初は、リスもあかんかったね。

SOUQ
えっ、リスは今たくさんあるじゃないですか。


シマリスをつくろうとしたんですけど、ヨーロッパに野生のシマリスっていないんですよね。坂井、ムダに動物に詳しいから、厳しくて(笑)

坂井
小難しいことを言ってたな。




それから、だんだん縛りを解禁していきまして。
坂井
ただ今でも野生の小動物というのにはこだわりがあって、ライオンとかは絶対つくらないですね。


アイドル系の動物も絶対つくらないね。パンダとかコアラとか。

坂井
最近は、動物モチーフのブランドもかなり増えたのですが、うちに遠慮してくれてるのか、ウサギはやめておこうと考えてくれるみたい。


そのぶん、珍しい動物のものはどんどんつくってらっしゃいますね。アリクイとかアルマジロとか。

SOUQ
それほど厳しい縛りがあるとは想像できなかったのですが、なんとなく、げっ歯類のアイテムが多いなあと思っていました。


そうなんですよ。実はモモンガにも2種類あって、うちのは、げっ歯類のリス科のほうでつくっています。



SOUQ
モモンガは2種類あるんですか!は有袋類のフクロモモンガとかいて、ペットで飼われているんですけど、2つは生物学的にまったく違う種類で…。


という話が延々続きます(笑)。お客さんもキョトン…ってなりますよね。でも有袋類のモモンガを飼ってる人からすれば、ウチの子がほしいわけですから、そっちをつくってほしい。でもうちにはないんですよね。

坂井
つくるつくらないの線引きは、実は郡のほうがうるさいんですよ。ボクは、つくってくださいと言われればつくっちゃうほうで。


やはりブランドとしては、死守したい部分があるんで、ディレクション的なことは私のほうでうるさくいいますね。オオカミとキツネまではいいけど、イヌはちょっと違うとか。



SOUQ
なるほど。なんとなくデコヴィーニャの世界がわかった気がします。


私たちにとっては、あるなしは明確なんですけど、お客様にしてみればわからない部分が多いかもですね。「なんでカエルがないの?」って強烈に言ってくる方もいらっしゃったりします。

SOUQ
カエル好きって、一定層いますからね。

坂井
カエルでも、襲われているカエルならありなんじゃないかとかね。


ちょっと残酷とか、そういう要素を入れていきたいという思いはありますね。

SOUQ
デコヴィーニャさんのアクセサリーって、単純にかわいいというよりは、怖い感じもありますもんね。


そこは、ウサギやリスのアクセサリーを、男性のお客様にも買っていただいている理由かもしれませんね。

SOUQ
ウサギ・アクセサリーを始めた当初は、それほど動物モノは世には出てなかったのですか?

坂井
なかったですね。だから、かわいくて、生命感を感じさせて、アクセサリーとしてつくられていない、ということを考えたときに、ウサギに行きついたんですね。


シルバーは、まだピカピカが主流だったので、デコヴィーニャみたいに毛並みを入れるというのは、ほとんどなかったです。それに、目にルビーやサファイヤなど石をつけられるし。坂井は元々ジュエリーを手がけていたので、いい石を使いたいというこだわりがあって。そうすると、ウサギの目の色はピタッとくるねと。ガーネットを使ったほうがウサギの目の色っぽいんですが、ルビーやサファイヤへのこだわりはあります。



坂井
それにウサギは、色バリで白や黒に変化させるのにちょうどいいなあと思った。色バリは、当時技法としてはあったのですが、商品として広く流通させたハシリだったと思いますね。

SOUQ
色バリ?


シルバーの色のバリエーションです。今はやってらっしゃるところもありますが、私たちが始めた頃は、変色で色加工するのは、すごく少なかったですね。

SOUQ
変色というのは、どういうものなんですか?


シルバーを酸に漬けたり、硫黄で色を変えたりするんです。

SOUQ
そうすると色が変わる?




はい。他のブランドさんは、変色の色が安定しないので1点ものとして出している。そうすると、お客さんは「この色、出会いだ!」と喜ぶかもしれない。でもうちは卸もやっているので、そうはいかないんですね。たとえば、銀座のお店にはこの白色があって、梅田のお店には微妙に違う白があるとしますよね。お客さんは両方を見比べて選ぶということができないじゃないですか。だったら、コンスタントに同じ色を出したいという思いがあります。でもそれがなかなか難しい。

SOUQ
どのへんがいちばん難しいところですかね?


硫黄の温度と濃度を調節するんですけど、料理をするのといっしょで、感覚なんですね。だいたいこれぐらいというのは決まってるんですけど、最終的には勘どころが決め手になってくるんですよ。



SOUQ
いまスタッフさんは何人いるんですか?

坂井
ボクたち以外は4人ですね。

SOUQ
一人前になるまでには、やはり時間がかかりますか?


うちは他に比べてアイテム数が多いので、それを全部覚えてもらうのにも時間がかかりますね。

SOUQ
アイテム数はどれぐらいあるのですか?


100ぐらいはありますね。

坂井
それに色のバリエーションを加えると、300ぐらいになりますかね。

SOUQ
アトリエでは、どういう流れで作業してらっしゃるのですか?

坂井
ほかでは流れ作業でやるところも多いかもしれませんが、ウチは、一から十までひとりでやることになっています。鋳造は他にお願いしてるんですけど、そこから、磨いて、つや消しかけて、色をつけたりという工程が始まります。ボクがいまやっているのは、原型づくりですね。



SOUQ
原型というのは、どうやってつくるんですか?

坂井
ロウでつくります。ロウは削ったり盛ったりできますから。


ハンダをちっちゃくしたようなワックスペンというのがあって、先っちょが熱くなるんですよ。これで溶かしたり、盛ったりします。

坂井
ちょっとやってみましょうか。熱して溶かす。テクスチャーつけたりとか。これの繰り返しですね。毛並みなんかは、この段階で削りながらつけていきます。



SOUQ
ワックスペンは、長さや太さなどいろいろあるものなんですか?

坂井
ボクはあまり多くの道具は使わないほうですね。1種類か2種類。


道具をたくさん使う作家さんだと、歯医者のようにズラッと道具が机の上に並んでますよ。

坂井
たぶんボクおかしいんですよ。よく職人さんって、道具を大切に長く使えって言いますが、ボクはたった200円の道具を30分磨いて長持ちさせるぐらいなら、新しいの買っちゃえって主義ですね。


使っているのも、初心者が最初に買うような道具だもんね。

坂井
いい道具っていったらこれぐらいですかね。


それバナーやん!

坂井
これは水素バナーといって、酸素バナーより細い炎が出るんですね。これで30万円ぐらいするんですよ。



SOUQ
ホントに細いですね!



これでロウ付けといって、半田付けみたいにロウをつけていくんですよ。

坂井
火で炙ったあと、酸につけて白くしています。シルバーは火で炙ると白くなるのですが、それだけだと色が安定しないので、酸につけるんですね。


表面が荒れてる感じの風合いになります。つや消しともまた違うマットな感じ。独特な粉っぽい風合いになるんですよ。それを使い込むと表面がピカピカになってくるので、ウチのアクセは毛並みが美しくなります。経年変化を楽しんでもらえるのも「デコヴィーニャ」のいいところですね。



SOUQ
今度はシマリスの色付けですね。毛並みは茶色い。

坂井
この茶色くするやり方は、ウチ独特で、データを取ってやってます。温泉に入ると、シルバーって黒くなるんですが、黒くなる直前で止めると、茶色とか赤色に変化します。だから硫黄でできている燻液を塗ります。


硫黄液の濃度と温度、そして漬ける時間を変えて調整します。

坂井
この色を出せるようになると、シマリスのリアルな感じが出てきますね。

SOUQ
こうすると、こういう色に変わるというのは、どう発見されたんですか?

坂井
いろいろやっているうちにですね。季節によっても変化の度合いが違うんですよ。




真鍮は金の、シルバーはプラチナの代替え品として使われていたのですが、どちらも変色がネックと言われていました。それを逆に利用しちゃってますね。シルバーはピカピカ仕上げが定石で、当然、傷や変色はネックなんですよ。でも「デコヴィーニャ」のアクセは、傷は毛並みで気にならない。変色は最初からなので問題なし。

SOUQ
古い価値観を逆手に取りましたね。


メリット、デメリットはこちらの提案の仕方でずいぶん変わるなあと。最初は色が変わるのはクレームになるかもしれないと心配でしたけど。

SOUQ
アクセサリーのデザインは、まずはデッサンしてから仕上げていくんですか?
坂井
デッサンというほどのものじゃないですけど、アイデアスケッチを描いています。こういうやつですね。


この「ふんわりネコリング」って。コンビニ・スイーツじゃないんだから! もっといいのあるでしょ。



坂井
アイデアを思いつくと、こうやって描いて見せるんですけど、この人はいつもグダグダ言ってきます。


悪いけど、全然褒めないですね。

坂井
ボクも、このノートを全然大事にしてなくて。執着がないんですよ。あっ、これは、めったに描かないですけど、ちゃんと描いた絵。「木陰のウサギ・リング」のアイデアスケッチですね。


こうやってちゃんと描いてくれたら、いいよねとなるよね。

SOUQ
すごく精密で立体的ですね。

坂井
スタッフにはつくるのを嫌がられますけどね。



SOUQ
こういうデザインは、どういうときに思いつかれたりするのでしょうか?

坂井
机の前でじっくり考えていてもあまり出てこないので、たまにふと思いついたときには、絵に描くようにしています。オートバイに乗ったときとかにも出てきたりしますね。


坂井はバイク用の倉庫も借りていて、ハーレーとか置いてますね。

SOUQ
動物図鑑とかも置かれていますけど、参考にしたりしますか?

坂井
意外に見ないですね。たとえば新作を発表しなければならないのに、なかなかアイデアが浮かんでこないときとかは、本屋さんに行って図鑑などを買ってくるんですが、最終的にはあまり見ない。


どんな動物がいいかな? というネタ探し的な役割ですよね。

SOUQ
坂井さんは、元々動物がお好きだったんですか?

坂井
そうですね。飼うのも好きなんですけど、構造が好きだったり生物学的なことに興味があったり。


うちのウサギたちは、あまりポーズがないんですよ。もうちょっとバリエーションがほしいって言ったら、坂井が、「そりゃリスのほうが関節の可動域が広いからね」と言い出して。ああこの人と話をしても埒があかないなと(笑)。

SOUQ
リアルなものをつくっている以上、嘘はイヤなんでしょうね。

坂井
デフォルメはしますけどね。ポーズをとらせて、ギリギリできる動きに抑えるようにはしています。


あまりリアルにお行儀がよすぎるポーズだと、剥製のように見えてしまうんですよね。



坂井
そうやね。死んでるみたいに見えるよね。

SOUQ
最近は、アクセサリー以外のアイテムもありますね。


2年前ぐらいですかね。財布などの革のアイテムを突然始めました。

坂井
アクセサリーとは、つくってもらうところが違うので、なかなか他の業態に入り込むのは難しいのですが、この人がなんかうまいこと取り入って…。


言葉悪い!

坂井
教えてくれる人を見つけたんですね。


新しいことを始めようとした時に、東京とか大阪だと、ちょっと動けばつくってもらうところは見つかる。でも三重にいるとそのへんが不利ですね。

SOUQ
なぜ革のアイテムをつくりたいと思われたのですか?




なんでもよかったといえばよかったんですけど。ポップアップなどに行くと、アクセサリーをすごくいいと褒めてくださる人が多いんです。ただ、アクセサリーってファッションに近いものじゃないですか。だから、「かわいいと思うけど、私はこれ着けられないかな」という人もいる。この人たちが持てるようなモノをつくれればいいなと思って。かばんの中に入るものならいいんじゃないかと。で、いろいろ考えたんですよ。ステーショナリーとかポーチとか。そんな中、声をかけてくださったのが、革に強い人だったんです。

SOUQ
アクセサリーでは、次のステップとして考えていることはありますか?

坂井
雑貨というよりは、純粋にジュエリーといえる商品ですかね。


売っている側からの感覚でいえば、今は雑貨とファッションの間ぐらいで売れていると思うのですが、完全にジュエリーに寄せたアイテムを展開していけたら楽しいなと。値段を気にしないと無茶もできるんですよ。デザインももっと思い切ったものができるんじゃないかと思いますね。



坂井
ボクと郡は、アンティークのリングやブローチが好きなんですよ。その中でも動物モチーフって結構あるんですよね。だから次につくるのなら、そういうものをもっとウチらしくできればいいねとお互い言ってるんですけどね。


だからイメージは共通の認識としてあるんですけど、モノとしてできあがって来たときに、それがどこまでお客様に受け入れられるか。売る場所も必要ですし、ハードルは高いですけど、チャレンジしていきたいですね。

SOUQ
アトリエで煮詰まったりすると、どうしてますか?

坂井
バイクに乗ったり、ガレージが歩いて10分ぐらいなので、そこまで行きますね。




私はセブンイレブンに行くぐらいですかね。

坂井
いっしょにごはん行くときは、[スシロー]行ったりするよな。



SOUQ
この商店街は、本当に立派なのですが、仕事の合間にぶらぶらしたりするんですか?


普通に生活の場として使ってますね。四日市でみんなよく行くカフェが商店街の中にあるので、そこに行ったり。私が小学校の頃からある純喫茶もすぐ近くなので行ったりします。

SOUQ
なにか、四日市の商店街の中でのゆっくりしたペースの生活が、創作にもいい影響を与えているような気がしますね?




そうなんですかね? ふだんはそんなに感じませんけど、ポップアップショップなどで東京や福岡へ行って、ここに帰ってくると、ホッとしますね。